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【大家さんの確定申告は——どうすれば正確に、節税も?】

賃貸住宅などを所有されている方は、ほとんどが税務に関わっているのではないでしょうか。「大家さん」の中には、年間数十億以上の売上があり、専門の会社設立をして従業員を抱え、数年経過している専業オーナー様もおられます。その場合、税務も当然“賃貸事業に長けた税理士”が顧問となっているでしょう。
ここではそれ以外のサラリーマン、フリーランスなど副業・兼業をしている方のための参考となるようにお伝えします。

必ずしも会社設立、税理士顧問契約がベストではない


「会社設立・青色申告」=絶対最適とは限りません。大家さんのそれぞれの事情、規模、損益の推移見通し、継続期間などによりどれを選択するか、どう変更するのかがベストなどかが変わってきます。
“税理士に頼んでいるから一切税務はわからない”と言う大家さんもいますが、「税理士依頼=最適税務」とは限りません。税理士でも、企業専門、海外税務専門などがあって必ずしも、賃貸事業に適しているわけではありません。
アパート1棟(8戸)とワンルームマンション3戸を副業(年収入600万)とする給与年収1,000万円のサラリーマンの方が、税理士と顧問契約し年間80万程度支払っておられ毎年変化無く給与分から補っておられる人がおられます。
賃貸事業に詳しく、多くの賃貸を経験している専門家(税理士)であれば、提案や指導がある筈です。これが無い税理士は再考すべきです。中には、このような場合顧問契約も無く、確定申告のみの手数料が安い(3~5万円)仕上げる事務所もあります。実態は、冬季のアルバイトを入れその人達が入力作成しています。当然提案・指導等は起こりえませんので、よく注意をして税理士の選定を行いましょう。

法人事業者の方は青色申告・白色申告の違いを知ろう

会社を設立している法人事業者の対象となる方は会社が小さくても「法人税等」の対象になります。個人事業者の方は、他の1部の所得と損益通算が出来ます。法人同様の扱い出来るのが「事業規模扱い」*1と言い、区分所有で5室以上、アパートで5棟以上の場合があります。また、申告方法に「白色申告」「青色申告」の方法が選択できます。申告方法、法人、個人の区分によってそれぞれメリット・デメリットがあります。*公的年金受給者は、雑所得(受給年金)と損益通算は出来ません。

(1)青色申告、白色申告のメリット、デメリット

*1不動産所得で事業的規模と認められた場合に限る。
*2複式簿記とは、貸方借方に仕訳記帳し、貸借対照表、損益計算書を作成

(2)会社設立、個人事業の方法 概略比較
本業がサラリーマンの人でもたびたび何かの知識から、個人事業から会社などの法人を設立した方が得策と言う事を聞かれたり学んだりした方が多いと思います。
上記の白色、青色の申告方法に拘わらず「個人」か「法人」を選ぶことが出来ます。「法人」は字のごとく自然人とは区別して「法律的に認められた人格」であって、社会的にも人格として認められた個人とは別の“権利”がありますが、“責任”も負う必要があります。
法人の代表的な組織が、株式会社、有限会社、合同会社、組合などですが、組織として事業を通じて利益を上げ、さらに拡大を目指します(NPO法人などは別)。
ここでは、税務上から「株式会社」を法人の代表的な例として、「個人事業」とどのように違うかを概略比較して見ましょう。株式会社は、最近は設立も手軽で以前は最低1,000万円の資本金が必要であったが、今では1円の資本金でも設立出来る。(設立の費用は20~30万円ほど必要)

A【個人の場合】(賃貸業)
期間:1月1日~12月31日
税金の種類:①所得税 ②地方税 ③消費税 ④個人事業税
① 所得税 (国税)
不動産所得(a)= 収入(賃貸料+償却可能敷金・礼金・更新料など) – 支出(管理手数料・募集費・保険料・公租公課・修繕費・減価償却費・借入利子・地代などその他)
*個人の不動産所得が赤字の場合は損益通算する時、土地に対する支払利息は経費と認められません。

給与所得の算出

給与控除の額=(d – e)×f=k 給与所得=(d – k)=L
所得から差引く所得控除額(m):社会保険控除、基礎控除、配偶者控除、扶養控除、寄付控除、
医療費控除、保険控除など
所得税の税率

所得税q=〔(給与所得L + 不動産所得a) – m〕×p
*復興特別税r=q×2.1%
② 地方税
地方税は、所得割として前年の総所得の額の10%を課税する。(県民税4%、市町村民税6%)標準均等割として、5,000円(県民税1,500円、市町村民税3,500円)
*東京都は特別区として10%と5,000円が課税
③消費税=8%(国税(6.3%)一部地方消費税(1.7%)が含まれている)
消費税課税売上*3が年間1,000万円以上は、仕入れや経費で支払った消費税分を差引いた額を納税します。逆に支払った消費税額が大きいと「消費税は還付」されます。
*3消費税課税売上とは、消費税が掛かる品目が決められており、住居の賃貸借料は非課税とされています。家賃でも事務所や店舗の家賃には消費税課税とされています。消費税の課税と非課税が混在する場合や他の事業との売上合算によって、消費税課税売上と非課税売上の割合によって、支払った課税仕入れ消費税にその比率で算出し、差額を納税します。一般の賃貸住宅では、賃料が非課税のため課税売上1,000万円は起こり得ません。
④個人事業税(地方税)
個人が事業として、該当の地方税に納付する個人事業税
〔個人事業所得(賃貸所得と他の所得)- 各所控除(青色特別控除は除く)- 事業主特別控除(290万円)〕×5%
*特に申告する必要はなく、確定申告などしていれば、地方行政機関より通知があります。
*業種によって税率が異なります。不動産賃貸事業は5%です。

B【法人の場合】
① 法人税(国税)個人事業の所得税に該当します。
法人税の税率(資本金1億以下の中小企業)

*(19%)は平成30年4月以降、1億以上の大企業は23.9%平成30年4月以降は23.2%となります
個人と異なり非常に単純です。個人で求めた「不動産所得」aとほぼ同様。
法人税h=不動産課税所得a×税率j 青色申告特別控除はありません。

② 地方法人税(国税)地方となっていますが、法人税の税率下げによって平成26年より導入された国税です。
地方法人税=法人税h×4.4%
③ 法人地方税(都民税)都道府県に納める。
*②=国税、③=地方税 ややこしいので注意が必要です。
所得割:法人地方税=法人税割h×12.9% (都道府県に相当3.2% 市町村に相当9.7%)
均等割:資本金1千万円以下=70,000円 1千万~1億円以下180,000円
*従業員50人以下の場合
④ 法人事業税(地方税)(都道府県)資本金1億以下の中小企業場合
年間所得によって3段階に分かれます

④ 消費税 個人の消費税の概要は変わりません。
法人で資本金1,000万円以下の場合は、設立後2年間は免除されます。
⑤  固定資産税(地方税)個人と同様。

ここまでご紹介しましたが、1度決まった税制も社会・国際情勢により毎年変更や追加が発生します。
特に毎年末になると来年度の税制が、財務省、政府与党によって検討が加えられる議論が出てメディアを賑わせます。従って、「税制は毎年変わる!」という認識を持ち、関心を持ってください。
*今年はサラリーマンのよりどころ、前記の「給与所得控除の縮小」(増税)が議論中です。

以上の状況によりご自身に当てはめ、1度試算をしてみてください。どれほど納税額が異なるか30分ほどで算出できると思います。特に、主業がサラリーマンで、副業として賃貸住宅をしている方(事業規模に満たない)、賃料収入が500万円未満で、投資ローンが数千万円ある人は青色申告を薦められ、四苦八苦しておられる人がいますので、試算することをおすすめします。

その条件に当てはまる方は、以下4つの組み合わせが考えられます。
主副   規 模        損 益    サポート
(1) 個人事業 白色申告  副業 事業規模にならない。当面利益見込無  独学&専門家
(2) 個人事業 青色申告  副業  事業規模達成   経常損益100万円 家族&税理士
(3) 法人事業 白色申告  主&副 事業規模1千万未満 利益200万~  スタッフ
(4) 法人事業 青色申告  主&副 事業規模達成    利益200万~  税理士

青色申告を選択するか、白色申告を選択するか、はオーナー様の賃貸状況やスキルにより異なりますので、ご自身に合った選択をするとよいでしょう。

本業と賃貸業に跨る費用には明確な基準がない

例えば主人(Aさん)がサラリーマンで、自宅は5階建てマンションの5階。
1F貸店舗、2~4F賃貸のマンションを所有、別の土地にアパート1棟(駐車場付き)7戸で、経営(事業規模を満たす)はAさん、青色申告で奥様が専従者として従事、自宅の書斎を事務所として活用。
このような場合、「事務所」の扱いが課題となる水光熱費、事務用品、OA機器の費用など、自家用と賃貸事業用の区分がしにくいかと思います。賃貸管理に関する費用(清掃費用、消耗品費用等)、お客さんに対する接待等は明快に分けにくい面が出てくるでしょう。
このような場合は次の2つのうち合理的と思われる方を選択し、按分して計上することは税務当局も認めると思います。
Ⅰ、面積割(自宅の床面積と書斎の床面積の比率)
Ⅱ、収入割り(Aさんの給与収入と賃貸事業の総売上高の比率)

その他にも、色々な費用按分問題が出てくるとは思いますが、出来る限り”社会通念上必要な経費”と思われるものは洗い出して節税に役立てるようにしたいですね。グレーゾーンな費用の活かし方は、日ごろのきめ細かな事務管理が肝要であることも理解しましょう。

おわりに

自分の今の働き方、収入にベストな確定申告で毎年の確定申告を行うようにしましょう。経費精算は自家用生活費を”ややグレーゾーンの費用”と甘く見て、賃貸事業経費を含ませるのは危険です。当然必要経費まで全額税務局から否認を受ける恐れもありますので注意が必要です。必要経費をきちんと確認、まめな管理で節税をしてみてください。

執筆者
野口 豊一(不動産コンサルタント、ファイナンシャルプランナー)

株式会社アイリスコンサルタント代表
■保有資格
宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーAFP

35年に及ぶ長年の不動産業、不動産金融を経験。特にマンション・不動産開発の企業で開発・販売・経理・経営に従事。1992年のバブル崩壊の苦い体験もし、企業の不動産活用に係わり不動産金融・ファイナンスに取り組む。