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あのTATERU急成長の裏に何が?改ざん問題を紐解く!

住宅や設備投資のために受ける融資の金利は、近年の景気対策も相まって、過去に例を見ないほど下がり続けています。この流れをチャンスととらえて、アパート賃貸経営に踏み切ろうとする人も少なくありません。

サラリーマンの年収が上がる気配も無い中、給与のほかに収入を得る手立てが欲しいと思う人にとって、不動産の家賃収入はとても魅力的に見えるでしょう。

しかし、不動産投資は多くの場合、融資という名の借金が前提にあります。不動産を購入したい人の資力が伴わなかったら……。2018年夏以降に不動産業界を震撼させた“TATERU問題”がまさにこれでした。

「不動産投資」における企業の「信用」を揺るがしかねない、株式上場企業TATERUの不正発覚問題についてたどってみましょう。

TATERUの書類改ざんの経緯

あのTATERU急成長の裏に何が?改ざん問題を紐解く!

TATERUの不正が明らかになったのは、一人のサラリーマンがアパート購入のために融資を受けようとしたことがきっかけでした。融資申込書類の記載内容に、大きな不正を発見したのです。その不正とは、資力要件の判断材料となる「預金残高」です。この一件の融資申込書類からTATERUの大きな問題が発覚しました。

●融資判断の重大要素 預金残高を改ざん

そのサラリーマンは、不動産投資目的で名古屋市内に三階建て木造アパートを購入・建設するため、西京銀行宛てに融資の申込書類を作成していました。購入を検討していたアパートの総工費は1億2000万円ほど。しかし、このサラリーマンの通帳残高は23万円ほどしかありませんでした。

融資関連書類の作成を手伝っていたのはTATERU営業担当者でした。融資を受けるうえで、資力を証明する預貯金残高は大きな要件となります。そのため、ある程度の預貯金があることが証明されければなりません。

あまりにも預貯金残高が少なすぎると憂慮したTATERUの担当者は、西京銀行に提出する審査書類のうち、銀行の預貯金写しを改ざんします。23万円だった預金残高を、買主のサラリーマンも知らない間に、623万円に見えるように加工したのです。

この書類を以って融資が実行されることはありませんでしたが、融資承認が下りたことに疑いを覚えた買主は銀行へ問い合わせをしました。それをきっかけに、営業担当者が作成した書類の中身を確認した買主が不正に気づき、この改ざんが白日の下にさらされることとなりました。

●受注件数全体のおよそ3割が通帳偽造!

TATERU書類改ざんの実態を調査した特別委員会が2018年12月27日に同社ホームページ上で公表した不正件数は、「成約数2269件のうち350件」でした。およそ3割の融資に対して不正が行われていたことになります。

不正の例として、「9300万円のアパートを購入したい買主の預貯金額4万円を、300万円に見えるように偽造」「17万円の預貯金額を600万円として捏造」といった具体的な内容も明らかになりました。

公表した350件の不正は「証拠がある件数」として報告されていますが、この他にも証拠が残っていない不正な契約があったとしたら……と想像してししまう人も少なくないでしょう。

不正調査対象は2015年以降の契約取引ですが、ちょうどこの時期は同社の業績が急激に伸びている時期と重なり、この急成長の裏には、こうした融資審査書類の改ざんがあるのでは?と勘ぐりたくなります。契約件数が急増し、それに伴って不正件数が増えたとも考えられますが、はたしてそれ以前はまったく不正は行われていなかったのでしょうか。

●不正はいつから行われていたのか

前述のとおり、調査結果は直近3年以内のものですが、実は2010年ごろには通帳の改ざんが行われていたという話もあります。融資を受ける金融機関に提出する契約書の額面を水増しして、買主に渡す実際の契約書を別に作成し、融資額を多く引き出そうとして取引停止となった金融機関もあるとか。また、頭金の不足分を工面できなかった買主に、見せ金としてTATERUが貸付をしていたなど、法律に違反する行為も話題に上がりました。

2014年には、経営層が社内に向けて「不正防止の勧告」を発表しています。すでにこの時点で組織内では不正が行われており、その実態を経営陣も知っていたのではないでしょうか。

また創業当初の2007年ごろには、銀行用・オーナー用それぞれに契約書と資金計画を提出し、「スルガならいくらでも融資を引き出せる」というたぐいの言葉を同社関係者が発していたという話もあるようです。創業の当初から恒常的に通帳偽造がなされていたのでは?という疑心を呈する人もいます。

●改ざんをしてまで売らねばならない理由が?

2006年に設立したTATERUは、ITを活用した新しいビジネススタイルで不動産投資事業の急速な拡大を実現してきました。「非公開情報の土地を会員に紹介するマッチングで土地在庫を抱えない」「アプリを活用してチャットで相談から購入までを完結する」という新しい不動産取引を実現しました。

その手法の新しさに注目が集まりましたが、同委員会の調査報告書には不正に絡む背景として、設立当初から部長クラスの管理職が配下の営業社員に厳しいプレッシャーを与えていたという、記載がなされています。

月末が近づくと応接室に担当者を呼び出し、罵声を浴びせる,備品に当たり散らす,物を壊すといった威圧的な態度で詰め上げ、人格を否定するような言動もあったとされています。目標達成が困難な社員は、どうにか契約に取り付けるために不正を繰り返して実績を作ったあげく、それが担当者責任として処理されてきたという記載もあります。

結果として、TATERUは買主を騙し、業績を上げるために欠かせない銀行などの金融機関までも欺くことになってしまったのです。

不正の元をたどれば、「ノルマ」という「プレッシャー」の過重がすべての元凶といえるでしょう。

現在のTATERUは

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契約や融資申し込みに不正があったことを公表したTATERUは、業務全般に対する信用を失いつつあります。不正に関わった31名の営業部長ら、その他、責任問題や今後の事業運営はどうなっていくのでしょうか。

●TATERU経営陣と会社の現状

上層のパワハラ、そして分かっているだけでも350件もの不正があったことに対する経営陣の処分に注目が集まりましたが、代表取締役以下の役員が報酬の50~10%を3ヶ月~半年間減給。また、常務取締役(古賀聡氏)が辞任したと発表しています。

2018年第2期に188億円あった自己資金(現金)が、第3期には70億円にまで減少。不動産額が59億から200億に膨れていますが、これから支出すべき流動負債と販売管理費、人件費などの固定費用の支出を考えると、これまで以上の売上(契約)を取り付けなければ経営を維持することは難しいでしょう。

問題が表面化する前に2000円を超える価格で推移していた株価は暴落し、2019年3月現在は一株200円台で推移しています。簡単に短時間で信用を回復する見込みは薄く、今後の経営見通しに明るいシナリオは描きにくい状況といえます。2018年第3期の成約(着工)数は45棟と、第2期の20%ほどに落ち込んでいます。これまでに契約していたものも施行目前にして解除される事例が相次いでおり、今後も契約した不動産の完成棟数は減少していくでしょう。

すべての契約取引や融資審査で不正が行われていたわけではありません。しかし、その割合の高さや、本来は融資貸付が難しい人に対して膨大な借金を負わせたこと、そして購入後の投資利益率が決して高いとは言えないプランニング、加えて買主が負担するランニングコスト(クラウド利用料や維持費など)の高さ……。顧客優先の考えとは遠く感じる「自社利益追求の経営方針」が今後どう変わっていくか、注目していきたいところです。

まとめ

あのTATERU急成長の裏に何が?改ざん問題を紐解く!

働き方や上司と部下の関係が何かと取り上げられる近年、最新鋭の不動産売買ツールをビジネスに取り入れながらも、その裏に隠されていた社員への過度な売上目標やノルマと上司からのプレッシャー。TATERUは自社が強みとしていた「アプリで始めるワンストップIoTアパート経営」というイノベーションを、自らの手で壊してしまったのです

TATERUの売上目標には、経営陣の想定と現場社員の目算に大きな隔たりがありました。そして、目の前の売上ノルマ達成のために不正をし、さらに、翌月、次期に前実績に上乗せしたノルマを課されることを繰り返しきたのです。
その結果、過酷な売上ノルマと公正な契約・取引を両立できなかったことが問題点の根幹でしょう。