親も高齢になり、多くの病院へ通うようになったり、付き添いをするようになったりすると、今までの既往症について知る機会も出てきますよね。自分が知らないうちに「実はこんな病気にもなっていたの?」と驚く機会もあったのではないでしょうか。
特に、目には見えない心の病気には気づきにくいものです。しかも、再発するのではないかという不安もつきまといますよね。また、実は若いときにかかるうつ病とは違い、高齢者ならではのうつ病というのも存在するのです。
この記事では過去に親がうつ病になっていたことを知った方々に向けて、そもそもうつ病とはどのような病気なのか、遺伝はおこりえるのかなど、様々な疑問について解説していきます。
親が過去にうつ病になっていた
うつ病とは?考えられる原因は?
うつ病とは、精神的ストレスや身体的ストレスを背景に、脳がうまく機能していない状態の病気をさします。どのような症状が出るのかは、十人十色です。一日中気分が落ち込んでいたり、何も楽しめなかったり、不眠、食欲不振が代表的な症状で、日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。
うつ病が発症する原因は、現段階では正確にわかっていません。
様々なストレスによって、脳の感情や意欲をつかさどる部分に不調が出ているためというのが、一般的な説です。原因となるストレスも、仕事や対人関係での悩みなどの他、意外なことに嬉しい出来事もうつ病を引き起こす要因となることがあります。
うつ病に年齢は関係ある?
単刀直入に言うと、うつ病になる人の年齢に関係はありません。どの年代の人でもなり得る病気の一つです。しかし、正式な病名ではないものの、65歳以上の人がかかるうつ病のことを「老人性うつ」と呼びます。
老人性うつは「一日中ぼーっとしている」「なんとなく元気がない」といった症状が、認知症の初期症状とも共通しているため、うつ病なのか認知症なのか判断がしにくいところは注意すべきポイントです。
うつ病になりやすい親の性格や特長は?
では、うつ病になった人の性格として共通しているものはあるのでしょうか。一般的に、うつ病にかかりやすいといわれている性格や特徴を挙げていきます。
- 生真面目な性格
- 責任感・正義感が強い性格
- 几帳面・完璧主義者
- 周囲からの評価が高い
- 周囲に相談・助けを求めない性格
いかがでしょうか。
「自分の親の性格と当てはまるものがある」と感じた方も、少なからずいらっしゃることでしょう。しかし、性格はうつ病になる大きな要因ではなく、あくまでも危険因子のひとつであるというだけです。また、ここで列挙した性格の人が、必ずしもかかるというものではありません。
性格そのものよりも、親が快適に問題なく過ごせているか、周りの人と自然にコミュニケーションを取れているかということを気にかけておくほうが大切です。
親がうつ病になっていたら遺伝はする?
うつ病と遺伝子の関連性は、多くの専門家によって日々研究がされています。現時点では次のようなものが有力な研究結果といわれています。
- 複数の遺伝子の関与で、「うつ病に対するかかりやすさ」が遺伝している可能性がある。
- 親、きょうだいにうつ病の人がいる場合、いない人に比べて2~3倍うつ病の発症率は高くなっている。
親が過去にうつ病になっていたからといって、必ず遺伝してうつ病を発症するというわけではありませんが、発症のリスクは高くなると考えられています。
「自分も、もしうつ病になってしまったら心配だな」という方は、自分のストレスになりそうな要因を極力減らしたり、上手に気分転換やリラックスできる方法を見つけたりすることをおすすめします。
うつ病は再発する?完全に治ることはありえない?
結論からお伝えすると、うつ病は治療ができます。
しかし、回復しても再発しないというわけではありません。元気になっても注意が必要で、再発の要因を減らすことが重要なのも事実です。ここでは、うつ病の治療法として代表的なものを紹介します。
環境調整
老人性うつの原因の一つに環境的要因があるため、患者が活力を取り戻せるような環境をととのえていく治療法のことを言います。
環境調整には家族のサポートが必須ですが、症状が重い場合には、必要に応じて入院を検討することもありえます。
薬物療法
一般的なうつ病と同じように、抗うつ剤を用いて治療する方法です。
以前は、高齢者にとって副作用が強いものもありましたが、現在は研究開発によって有害な作用が少ない薬も使用できるようになりました。その人の身体状況や常服薬の有無によって抗うつ剤を選択するので、医師の診断は必要不可欠です。
精神療法
「親がうつ病になってしまった場合の接し方は?」の見出しでお伝えした、ゆっくり休ませることが精神療法にあたります。
一度休むと決めたことでしだいに心の安定が生まれますが、老人性うつの場合はそこからもう一段階、今度は動くことも促していきます。これは、安静にするあまり心が回復する前に、身体が弱ることや、認知症を予防するためです。
高齢者のうつに対しては、身体と精神両方の側面からアプローチした治療が大切です。
完全に治ることはあり得ないの?
うつ病の場合、完全に回復することを寛解と呼びます。うつ病が回復したように見えても再発する可能性があることは既にお伝えしましたが、実は再発の割合は60%にものぼります。
しかし、逆に言うと残りの4割の人々は、再発することなく寛解した患者さんですので、完全に治ることはもちろんあります!再発しないように、完全に治すために気をつけたいポイントは以下の3点です。
- 小さな残遺症状(いらいら、不安など)を残したまま治ったと思わない
- 内服薬を適切な量で十分な期間続けること
- 自分が「うつ病だったこと」を忘れないこと
うつ病再発の兆候は?遠方に住む親が再発したらどうする?
うつ病再発の兆候は?
再発の兆候も、最初にうつ病になった時にあらわれる症状と変わりません。
- 「1日中気分が落ち込んでいるみたい」
- 「お父さん、お母さんが今まで好きだったことなのに、全然楽しめていないみたい」
- 「ここしばらく、なかなか眠れていないようだ」
このような兆候が表れたときは、再発の可能性があります。気をつけて様子を見るようにしてください。
同居をしたほうがいい?
遠方にいる親がうつ病になった場合、離れているだけにより不安になりますよね。親自身も同居を望んでいて、状況的にも可能ならば希望をかなえることは好ましいです。しかし、同居することが正解だとは限りません。
その理由は、住み慣れた家を離れたり、逆に自分の居住空間の中に新しいメンバーが増えたりするという環境の変化が、さらなるストレスにつながることもあるからです。
また、この記事を読んでくださっている子供世代の方が、自分の生活を犠牲にすることも最善とは言えません。同居については、ゆっくりと時間をかけて相談したうえで、結論を出すことをおすすめします。
また、同居しないという選択肢をとり、なおかつ「他の親族や近所の人にも頼れない」という場合には、地域のサポート体制を確認し、有効に使いましょう。地域の福祉センターや保健センターでは、心の健康相談もできるようになっており、医療機関の紹介や日々の声かけなど、多岐にわたるサポートをしてくれます。家族だけで抱え込まず、専門家の力を借りることも大切ですよ。
まとめ
ここまで、過去に親がうつ病にかかっていた場合の再発の可能性や、現在主におこなわれている治療について説明してきました。最後に、これさえ覚えておけば大丈夫という、重要なポイントをまとめておきます。
- うつ病の原因は正確にはわかっていないが、精神的・身体的ストレスに由来。
- うつ病は年齢を問わず、だれでもなる可能性がある。また、65歳以上の人がかかるうつ病を一般的に「老人性うつ」と呼ぶ。
- 生真面目、責任感が強い、完璧主義者、周囲からの評価が高い、1人で抱え込みやすい。これらの性格の人は、うつ病になりやすいと言われている。
- 親がうつ病にかかった経験があると、血縁者にうつ病患者がいない人にくらべ、うつ病になるリスクは2~3倍高くなる。
- うつ病は完全に回復できる病気だが、6割の人が再発している状況。回復したと思っても過ごし方に注意が必要。
- うつ病再発の兆候は「今まで楽しんでいたことなのに楽しめない」「1日中気分が晴れない」、「睡眠不足が続く」など、最初に発症するときの兆候と同じ。
- 遠方に住んでいる親がうつ病になった場合、同居が最善というわけではない。地域の支援やサポート体制も有効に使っていくことが大事。
自分の親が過去にうつ病になっていると、「再発するのではないか」「もしかしたら、自分もうつ病になるのではないか」と不安になってしまいますよね。
そんなときにまずできることは、ストレスになりそうな要因をできるだけ取り除いたり、自分にぴったりのリラックス方法を見つけたりすることです。
うつ病は今では珍しいものではなく、誰でもなる可能性がある病気です。過去に比べると医療機関への受診もやりやすくなりました。ぜひ、ひとりで抱え込みそうな時は、周りの人や専門家に相談してくださいね。
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