2020年2月27日、当時の安倍晋三首相は、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、全国すべての小中高校および特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまで臨時休校にすると発表しました。
それによって、入試は?卒業式は?部活や塾はどうなるの?と大人も子供もざわめいたことを思い出します。でも、その時、ほとんどの人が想像もしなかった問題が、このあと子供たちの身にふりかかりました。
同年4月、初の緊急事態宣言が発出されると、“外出自粛やリモートワークのため、家族全員が毎日家にいる”という非常事態が起こったのです。
年末年始やお休みの日に家族が全員家にいるのとは全く違い、それぞれが仕事や勉強を抱えた状態で、一つ屋根の下で過ごすことは、想像を絶するストレスを生みました。そして、そのせいで“夫婦喧嘩”が増えたという声が多数聞こえるようになりました。
一番とばっちりをくらったのは、学校にも行けず、外出もできない子供たちでした。
彼らに逃げ場所はなく、日々繰り返される親の喧嘩にストレスを感じながらの生活が続き、中には、エスカレートする親の喧嘩に恐怖を感じた子もいると言います。
そしてそれはいまも続いています。
親は、子供たちがどれほど苦しんでいるのかに気づいているのでしょうか?気づいていないとしたら、子供はどんなふうに自分たちの気持ちを伝えたらいいのでしょう?そして、親の喧嘩を止めることはできるのでしょうか?
私自身、喧嘩の絶えない親の元で育ちました。
自分自身が親になった今、親の喧嘩で苦しい思い、怖い思いをしている子供たちを救う手段はないだろうか?とあれこれ調べてみました。
よろしかったら参考にしてみてください。
親の夫婦喧嘩が怖い!
親の夫婦喧嘩が怖いと感じる瞬間
コロナ禍でリモートワークになった父親と母親が、つねに家の中で顔を突き合わせることになり、これまでなら喧嘩にならなかったような些細なことでもめ、毎日一触即発の空気でピリピリしている
コロナの影響で収入が減った父親を母親が責め、言い争いが絶えない
飲みに行けなくなったことでイライラしているのか、父親の母親に対する暴言がひどい。時には暴力もふるい、母親がけがをすることもある
お酒を飲んだ両親がヒートアップして大声で怒鳴りあい、近隣から苦情が来る
毎日のように家にいるのに家事を手伝わない父親の存在がストレスになる母親が、イライラを父親にぶつけ、文句を言われた父親が暴力を振るうようになった
子供にとって、親の夫婦喧嘩は「嫌」なだけでなく「怖」
「自分が怒鳴られたり暴力を振るわれるわけじゃないなら、それほど怖くないのでは?」と思う人もいるかもしれません。
ですが、子供の立場からすると、そんな風に割り切れるものではないのです。
親が夫婦喧嘩をしているときは、普段子供に接しているときの声のトーンや大きさとは違っているので、その声を聞いて恐怖を感じるということに加え、本来であれば一番安心できてくつろげなければいけないはずの自分の家において、
常に怒鳴りあう声がしている
時には暴力沙汰になり、けがをしたりものが壊れたりする
という、心理的な恐怖も感じているのです。
ましてや、気軽に外へ出かけたり友だちと会って気晴らしをしたりすることが出来ない状態であれば、逃げ場のない恐怖や、将来や未来に希望が持てない怖さを感じたとしても無理はありません。
厳密に言えばそうではないのですが、子供はそう思っているのです。
だからこそ、繰り返される親の夫婦喧嘩から逃げ出したくても、それすらできずにいるのです。
親の夫婦喧嘩がストレス!子供への影響は?
親の夫婦喧嘩を見聞きしながら育つことは、子供によくない影響を与えることが、医学的に証明されています。
2017年 福井大学とハーバード大学が調査をおこなった結果、日常的に両親の暴力や暴言を見聞きしてきた子供たちは、脳の視覚野の一部が委縮していたといいます。
そして、驚くことに“肉体的な暴力”よりも、“言葉の暴力”の方が委縮率が高かったのです。
叩いたり物を投げつけたりするよりも、「叱る」、「おどす」、「ばかにする」などの、いわゆる“暴言”が、より悪影響をあたえるというのです。
具体的に現れる悪影響
記憶力や学習能力が低下する
日常的に暴言に接していると、脳の海馬、偏桃体に異常をきたし、やがて怒りや不安を感じやすくなったり、視覚野の一部も委縮し、記憶力や学習能力が低下する。
子供自身の攻撃的な言動の原因になる
日常的に聞いている言葉が、子供の口から自然に出てくるようになる。
無意識に人を傷つける言葉を言ってしまったり、「困ったら、両親がやっているように怒鳴ったり叩いたりすれば解決できる」と思ってしまう可能性がある。
感情のコントロールが難しくなる
両親の愛情が「無条件に与えられるものではない」と無意識のうちに感じ、心が不安定になったり疑り深くなったりする。また、ささいなことで怒るなど、人間関係を難しくする可能性がある。
喧嘩をしている本人たちが思っている以上に、そばにいる子供たちは深く傷ついているということを、親は自覚しなければなりません。
親の夫婦喧嘩の原因は?
夫婦喧嘩の原因は?なぜ喧嘩をするの?
あるアンケートによる「夫婦喧嘩の原因」を1位から順に紹介します。
- 1位:言い方が悪い
- 2位:態度が悪い
- 3位:コミュニケーションが取れない
- 4位:家事のやり方が気に入らない
- 5位:お金がない
以下、休みの日の過ごし方、お互いの両親と合わない、生活時間が合わない...と続きます。
ただ、これらの理由で夫婦喧嘩をすることが、即、子供への悪影響につながるわけではありません。意見が合わずに言い争いになることなど、どんな夫婦でもあるでしょう。
問題なのは、話し合いの範囲を超えてしまい、暴言、暴力に発展し、収まりがつかないということが繰り返される場合です。
毎日のように喧嘩をするのに離婚をしない理由は?
毎日のように喧嘩をしていたとしても、だからと言ってすぐに「離婚」ができるかと言えば、答えはNOでしょう。
母親側は、先立つお金のめどが立たなければ離婚はできません。
父親側は、これまで生活する上での面倒ごとをすべて母親に任せてきたような場合、離婚したら翌日からそれら全てを自分がやらなければなりません。
それらがクリアできたとしても、子供たちはどうするのか?学校は?学費は?習い事は?たとえ毎日激しい喧嘩をしていたとしても、簡単に離婚は「できない」のです。
だからこそ、そんな現状にまたストレスを感じてしまい、悪循環しているのかもしれません。
共依存という状態にある場合も
夫婦間の共依存とは、「夫婦という関係であることに依存している状態」を言います。
たとえば、「ダメな(問題がある)相手には、自分がついていなければならない」と考えることで、「明らかに問題があるのに離れられない」関係性などを指します。
“自分以外の誰かのお世話をすることに喜びを感じる”という人が陥りやすいと言われているので、その場合は、いわゆる「毒親」である可能性も高いかもしれません。
警察に通報をする?
夫婦喧嘩に警察が介入することはあるの?どのような事態になったら警察に通報をしたほうがいい?
夫婦喧嘩が激しくなり、暴力をふるったりものを壊したりしはじめたら、警察を呼んで収めてもらいたいと思うかもしれません。
言い争いレベルの喧嘩なら、警察は「民事不介入」といって、相談にはのってくれないようです。しかし、暴力に発展した場合は、「DV防止法」に基づき介入できるようになりました。
包丁などの凶器を持って脅した
などの場合は、警察に通報し、来てもらうことができます。
また、子供の前でのDVや暴言は「児童虐待」に該当します。あまりにもエスカレートするようなら、通報してください。
警察が来れば、両親も冷静になってくれるかもしれません。
夫婦喧嘩をやめてもらうには?
親に夫婦喧嘩をやめてもらうように伝える方法や伝え方は?
効き目がありそうな方法をいくつか紹介します。
「なんで喧嘩しているの?理由を教えてほしい。私にできることがあればやるから、喧嘩をやめて欲しい」
子供からの “I(アイ)メッセージ※” を伝えれば、冷静になってくれるかもしれません。
※I(アイ)メッセージとは、「あなた(たち)に、喧嘩をやめて欲しい」というYou(ユー)メッセージとは逆の、「私は・僕は、喧嘩をやめて欲しい」という、自分を主語にしたメッセージ。
言葉で伝えるのが難しい場合は、思いを手紙に書く。
その際は、やはりI(アイ)メッセージで。
祖父母が健在なら、相談にのってもらう。
子供の言葉は聞けなくても、自分たちの親からの意見なら聞ける場合もあるかもしれません。
その時、子供であるあなたは、「どちらかの味方につかない」ほうがいい場合が多いかもしれません。
なぜならば、たとえどちらかが一方的に傷つけられていたとしても、あなたに味方になってもらえなかった側は、怒りを倍増させてしまう可能性があるからです。
傷ついている側をかばいたくなる気持ちは当然ですし、本当によくわかりますが、あなたまで傷つけられないようにするためにも、
というメッセージは、“喧嘩をしている両親へ、それを見て苦しんでいる子供からのメッセージ”として伝えることが有効かもしれません。
親の夫婦喧嘩の悩み相談先は?
10代のための相談窓口まとめサイト

電話で話せる相談窓口
◆東京弁護士会 子どもの人権110番

◆児童相談所虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」
◆いのちの電話連盟
LINEやチャットで話せる相談窓口
◆チャイルドライン
◆子ゴコロ・親ゴコロ相談@東京
◆若草プロジェクト(10代、20代の女性のための相談窓口)
◆BONDプロジェクト(10代20代の生きづらさを抱える女の子のための女性による支援)
メールでの相談窓口
◆子どもとツナガル~弁護士プロジェクト~

ひとりで苦しい思いを抱え込まないで。わかってくれて、助ける方法を考えてくれる大人は必ずいます。
まとめ
コロナ禍以降、親の夫婦喧嘩で苦しんでいる子供が増えています。親の夫婦喧嘩を止める方法や、やめて欲しい気持ちの伝え方、また、信頼できる相談先を調べてみました。
- 親の夫婦喧嘩が怖い! 子供たちは、自分が怒鳴られたり暴力を振るわれていなくても、親が喧嘩をしている声や雰囲気、また将来に対する不安から恐怖を感じ、それをがまんしています。
- 親の夫婦喧嘩がストレス!子供への影響は? 親の夫婦喧嘩を見聞きしながら育つと、子供の脳は傷つき、記憶力や学習能力の低下、攻撃的な言動、感情のコントロールができなくなるなどの悪影響があることが研究の結果わかっています。
- 親の夫婦喧嘩の原因は? コロナ禍、家で過ごす時間が増え、またストレス解消に出かけることもままならなくなり、ささいなことが原因での喧嘩がエスカレートする例が多いようです。とはいえすぐに距離を置くことも難しい。それがさらにストレスの原因になっているかもしれません。あるいは共依存の状態になっている場合も。
- 警察に通報をする? 言い争い程度の喧嘩には警察は来てくれませんが、暴力に発展した、誰かがけがをした、包丁などを持ち出した、などの場合は警察に通報して来てもらうことができます。また、子供の前でのDVや暴言は「児童虐待」に該当するので通報してください。
- 夫婦喧嘩をやめてもらうには? 「私は・僕は、喧嘩をやめて欲しい」という、「I(アイ)メッセージ」を伝えてみましょう。直接伝えられない場合は、それを手紙に書いて渡してみましょう。祖父母が健在なら、相談にのってもらいましょう。あるいは、親の夫婦喧嘩や家庭の中の悩み事など、子供の相談にのってくれる相談窓口はいくつもあります。ぜひ活用してください。
私の両親は、残念ですがどちらかが亡くなるまで仲の悪い夫婦でした...いえ、そのように子供である私には見えていました。
でも、実際に仲が悪かったのかどうかは、私にはわかりませんし、時にはけがをするような夫婦喧嘩をしながら、それでも離婚せずに一緒にいた理由はなんだったのか?その点を掘り下げる元気も勇気も、子供の私にはありませんでした。
夫婦喧嘩が始まれば、耳をふさぎ、ただ嵐が過ぎ去るのを身を固くして待つしかありませんでした。
そして、
働けるようになったら一刻も早くこの家を出たい
そればかりを考えていました。
私は、自分が結婚し子供を生み育ててみて、やっとあの頃のことを冷静に考えられるようになり、親が離婚しなかった理由は、やはり金銭的な問題だったのかもしれないなあと思っています。
でも、だからと言って、子供に苦しい思いや怖い思いをさせながら結婚生活を継続していいとは思いません。
子供のあなたは、苦しい思いをひとりで抱え込まず、信頼できる大人に相談してください。
今、かつての私のような経験をしている若い人たちには、これ以上傷ついてほしくはありませんし、明るい未来を描いて、夢を実現していってほしいと思っています。
きっとできます。諦めないでください。
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