- 「親が万引きをしたと連絡が入った!」
- 「前科者になってしまうの…?」
- 「そもそも、どうして万引きなんかしたのだろう?」
高齢化社会と言われて久しい昨今、高齢者による犯罪のニュースが後を絶ちません。中でも万引きは身近に起こりうる犯罪と言えるのではないでしょうか。
自分の親が万引きをしてしまったら、家族としてどのような対応をすればいいのでしょう? 今、自分の身に起こったとしても、私は冷静に行動できる自信がありません。
そこで、高齢の親が万引きをしたときに家族が取るべき行動やその原因についてリサーチしてみました。
この記事を読むと、高齢の親が万引きをしたときのお悩みを解消することが可能です。
この記事では以下3つのポイントについて統計データを交えて解説します。
- 高齢の親が万引きをしたときの家族が取るべき行動とは
- 高齢の親が万引きをしてしまった原因は?
- 高齢の親が万引きをやめられない場合は?
高齢の親が万引きをしたと連絡が!家族がとるべき行動は?
「自分の親が万引き?そんなのレアケースでしょ」と思われる方も多いと思います。
法務省の令和2年版犯罪白書によると、刑法犯として検挙された人の数は平成16年の約39万人をピークとして令和元年には約19万人まで減少しています。
それを年代別に見たときに、ほかの年齢層の多くが減少傾向にあるにも関わらず、70代以上の高齢者の検挙人員はほぼ一貫して増加、令和元年は22.0%となっています。平成12年の約16%と比較するとおよそ6%も上昇しています。
そして、検挙された人を罪名別の構成比についてグラフにしたものがこちらです。
出典元:法務省 令和2年版犯罪白書
実に半数が万引きで検挙されているということが分かります。
もちろん、店舗側が「今回だけは勘弁しますよ」と警察へ連絡しなかったケースはこの数値に含まれません。
「あなたの親御さんがうちの店舗で万引きをしまして…」という連絡が入る…やはり他人事ではなく身近な問題ととらえたほうがよさそうですね。
実際にそのような連絡を受けた場合、家族がとるべき行動は以下の3つです。
- すぐに現場にかけつける
- 謝罪
- 示談交渉
連絡を受けたが仕事中だった…そのような場合ももちろんあるでしょう。
しかし、身元を引き受ける人が来ないとなれば、店舗としても警察へ通報せざるを得ないと判断するかもしれません。謝罪をしたとしても印象が悪くなってしまい示談交渉がうまく運ばないということも考えられます。
また、孤独感から万引きをしてしまうという人もいます。
「すぐに来てくれなかった…どうせ私のことはどうでもいいと思っているんだ」という感情が強くなれば、その後の更生に影響が出て再犯…という結果を招く可能性もあります。
家族間で連携を取り、すぐに駆けつけましょう。
非はこちら側にあるのですから、素直に謝罪をし、親には反省を促します。その上で「自分たち家族が二度とさせない」ということを伝えられれば、店舗側との示談も円滑に進むでしょう。
万引きをした本人が「もうしない」といくら言っても、被害にあった店舗とすれば、にわかには信じがたいものですから。
示談が成立すれば、警察に通報されたとしても不起訴となる可能性も高くなります。示談交渉がこじれそうな場合は、弁護士に相談するのもひとつの方法です。
高齢の親が万引き、初犯の場合は無罪になる?
万引きは窃盗罪です。
親が万引きをしたという連絡が入ったとき、気になるのは「前科がつくのでは?」ということではないでしょうか?
結論から言うと、万引きに関しては初犯の場合、前科がつかないことがほとんどです。前科がつくとはどういうことでしょうか? 裁判で有罪判決が出るということです。
刑事事件における裁判までの流れを簡単に記すとこうなります。
万引きであっても逮捕されることはもちろんありますが、万引きの初犯において取られる処分のうち、多いものは以下2つです。
- 警察による微罪処分(上記②の段階での処分)
- 起訴猶予を理由とする不起訴処分(上記③の段階での処分)
いずれも刑事裁判以前の処分になりますので、前科はつかないということになります。
微罪処分 | 事件が特に軽微であることや被害者が処罰を望んでいないことなどを理由に送検することなく警察だけで処理する手続きのこと。 (その基準は、各地方検察庁の検事正が管轄区域内の警察に指定する) |
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起訴猶予 | 犯罪は立証可能だが、被害が軽微・示談が成立しているなどを理由として検察が不起訴とする手続きのこと。不起訴の理由のひとつ。 |
諸事情が考慮されることになりますが、やはり示談が成立していることは重要であることが分かります。
ただし起訴されることなく前科はつかなかったとしても、前歴はつきます。前歴とは、警察や検察の捜査対象になったことがあるという事実、履歴のことです。
初犯で不起訴処分となっても再び万引きをした場合には、起訴・不起訴の判断や裁判における量刑の判断において、被疑者にとって不利に考慮される可能性があります。
高齢の親が万引きをしてしまった原因は?
東京都の万引に関する有識者研究会が発表した「高齢者による万引に関する報告書(平成29年3月)」によれば、以下3つの要因が指摘されています。
1.経済的要因
65歳以上の高齢万引き被疑者の約8割が無職で、その犯行の動機として「お金を払いたくないから」「生活困窮」がそれぞれ約3割を占めています。
出典元:「高齢者による万引に関する報告書(平成29年3月)」万引に関する有識者研究会
2.身体的要因
加齢に伴い心身の機能が衰えていきますが、特に認知機能の低下が指摘されています。他人の物と自分の物の区別がつかなくなり持ち帰ってきてしまうというケースもあるようです。
認知症については、後述します。
3.周囲との関係性
出典元:「高齢者による万引に関する報告書(平成29年3月)」万引に関する有識者研究会
上図グラフの通り、65歳以上の高齢万引き被疑者のうち、独居は56.4%、交友関係いないとの回答が46.5%に上っています。
社会的な孤立が孤独やストレス等につながり、問題行動へ発展していると見られています。
このような要因を踏まえると、家族が再犯防止に向けてできることが見えてきそうです。
高齢者の万引きの再犯率と再犯防止に向けた対処法は?
高齢者万引き再犯防止に向けて‐家族同居編‐
高齢者による万引きの再犯率はどれぐらいなのでしょうか?
出典元:「高齢者による万引に関する報告書(平成29年3月)」万引に関する有識者研究会
左図が万引き被疑者に何らかの犯歴があった人の数、右図が万引き被疑者における同一罪種(窃盗罪)の再犯率を示しています。
65歳以上の高齢者は他の年齢層より高く、窃盗罪の再犯率は半数を超え53.3%にも上ります。
前項で孤独が万引きの要因のひとつとなっていることをお伝えしました。再犯防止のために家族ができることは、高齢者の言うことに耳を傾けることです。
上でご紹介した動画は神奈川県が作成した動画です。12分ほどの動画ですが、つい万引きをしてしまった高齢の親の気持ちの揺れが分かります。
別居しているのであれば、今までよりも電話や実家に顔を出す回数を増やしてみる。
同居していても高齢者だけが取り残されていると感じることがないような工夫が必要です。それまで食事を別にしていたなら食事の時間を合わせてみる、買い物に付き添ってみる、など簡単なことから始めてみましょう。
家族だけでなく地域とのつながりも回復できるよう、親の趣味などが活かせる地域のコミュニティを探してみるのもいいですね。
高齢の親が万引きをやめられない場合は?病気?
親が何度も万引きを繰り返してしまう、どうしてもやめられない…という場合は病気も考えられます。
クレプトマニア(窃盗症)
クレプトマニアとは、万引きや窃盗をやめたいのにやめられない、窃盗に依存する精神疾患です。
盗んだものには関心がなく、盗んだ本人も「なぜこんなものを?」ということがしばしばあります。まさに窃盗のための窃盗を繰り返します。
もしかしたら? と思った場合は公的な相談窓口があります。
全国精神保健福祉センター一覧
さまざまな依存症や心の問題について本人や家族からの相談を受け付けています。
認知症
高齢者の場合、一番に疑うべき病気は認知症です。
認知機能の低下により、「自分の物と他人の物の区別がつかない」「店舗での購入手順が分からない」ために持ち帰ってきてしまう…ということが起こります。もちろんこれは万引きですね。
また、認知症のひとつに前頭側頭型認知症があります。
前頭側頭型認知症の場合、記憶や日時を把握することはできるのですが、論理的な思考が難しくなるため、社会通念に沿った行動ができなくなってしまいます。また理性を抑えることができないため、「欲しい」と思った物をそのまま持ってきてしまうのです。
病気の場合、刑罰が万引き行動の抑制にはつながりません。疑いがあれば、専門家に相談することをおすすめします。
まとめ
最後にポイントをまとめておきます。
▢高齢の親が万引きをしたとき、家族がとるべき行動は3つ
- すぐに現場にかけつける
- 謝罪
- 示談交渉
▢高齢の親が万引き、初犯の場合は微罪処分・不起訴処分が多い
▢高齢の親が万引きをしてしまった原因3つ
- 経済的要因
- 身体的要因
- 周囲との関係性
▢高齢者の万引きの再犯率は5割超! 再犯防止の対策は孤独感の解消
▢高齢の親が万引きをやめられない場合、考えられる病気は?
- クレプトマニア(窃盗症)
- 認知症
「なぜ、こんなことが自分に降りかかるの…?」と言いたくなるお気持ちはよく分かります。どうか自分を責めないでください。今までよりも少しだけ自分の親に寄り添う時間を作ってみましょう。
ただ、それまでの親子関係から、これ以上密な関係を作るのは無理だと感じる方もいるはずですね。そんなときは施設の利用が有効です。専門家の力を借りてみましょう。
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